車の名義とローン契約者は違う人でもいい?名義に関する注意点と保険との関係

はじめに

車を購入する際に、「車の名義(所有者)とローンの契約者が別の人でも良いのだろうか?」と疑問に思う方は少なくありません。例えば、親がローンを組んで子供が車を使う場合や、夫がローンを契約して妻が車を主に運転する場合など、家族間で名義を分けたいケースもあるでしょう。また、名義やローン契約が異なる場合に自動車保険は問題なく加入できるのか、不安に感じている方もいるかもしれません。

本記事では、車の名義人(所有者・使用者)とは何かを解説し、車の名義人とローン契約者が違う人になるケースについて、法的に問題ない場合と注意すべきケースを具体的に説明します。さらに、名義人と契約者を分けることのメリット・デメリットや、自動車保険への影響、税金や手続き上の注意点など、知っておくべきポイントを詳しく紹介します。初めて車を購入・リースする初心者の方にも分かりやすいように解説しますので、ぜひ参考にしてください。

車の名義人とは?所有者と使用者の違い

はじめに、車の名義人とは何を指すのか押さえておきましょう。自動車の登録証(車検証)には、「所有者」「使用者」という2つの区分が記載されています。それぞれ次のような意味があります。

  • 所有者:その車を法律上所有している人です。所有者にはその車を処分(売却したり廃車にしたり)する権利があります。
  • 使用者:その車を日常的に使用・管理する人です。使用者には車を管理する責任(定期点検を受ける、税金を納める等)があります。ただし、所有権は持たないため、勝手に車を売却・廃車処分することはできません。

多くの場合、車を購入した人自身が所有者兼使用者となります。しかし、ローンを利用する形態によっては、所有者と使用者、ローン契約者の関係が変わることがあります。

例えば、銀行などのマイカーローン(自動車ローン)を利用して車を購入する場合、銀行から借りた資金で自分自身が車を購入するため、所有者・使用者ともに購入者本人となり、ローン契約者も購入者本人になります。購入者自身が車の名義人(所有者)となり、ローンを返済していく一般的な形です。

一方で、ディーラー提携のローン(いわゆるディーラーローン)を利用した場合は少し事情が異なります。ローンを完済するまで車の所有権が信販会社や販売店に留保(担保)される契約になるため、車検証上の所有者はディーラーや信販会社使用者は購入者本人という形になるのが一般的です。このように、ローン返済中は販売店等が車の名義上の所有者となり、購入者は使用者として登録されます(この契約形態を「所有権留保」といいます)。所有権留保はローンの担保として行われるもので、この場合は名義上の所有者とローン契約者が異なっていても特に問題はありません。

車の名義人とローン契約者が異なっていても大丈夫?ケース別の解説

では、車の名義(所有者または使用者)とローン契約者が違う人になることはできるのでしょうか。家族間などで名義人と契約者を分けたいケースと、そうすることで問題が起こるケースについて見てみましょう。

家族間で名義人とローン契約者を分けるケース(問題ない場合)

家族や親族の間で、車の名義人とローン契約者を別々の人にすること自体は可能です。そして条件を守れば法的にも問題なく行えます。ポイントは、ローン契約者となる人が車の「所有者」となることです。

例えば、子供がまだ学生や新社会人で十分な収入がない場合に、親が代わりにローンを契約して車を購入し、その車を主に子供が使うケースを考えてみましょう。この場合、親がローン契約者(借入れをする人)となり、親自身が車検証上の所有者として登録します。そして車検証の使用者欄には子供(実際に運転・管理する人)を登録すれば、親が所有者・ローン契約者、子供が使用者となり、名義人とローン契約者が異なる状態でも特に問題なく車に乗ることができます。

同様に、夫婦間でも収入の高い方がローンを契約し、もう一方が主に車を使うという形が可能です。例えば妻が普段車を使うが収入が少ない場合、夫がローン契約をして資金を借り、夫が車の所有者、妻が使用者として登録する方法があります。逆に、夫婦どちらかが購入者(所有者)となり、もう一方は実際にはよく運転するだけというケースでも、使用者欄に運転する人の名前を記載しておけば問題ありません。

以上のように同居の家族配偶者といった間柄であれば、車の購入者(ローン契約者)と日常の使用者を分けて登録することが認められています。ただし、後述するように使用者に登録された人には税金の納付や車検を受ける義務など実務上の責任が生じますので、この点は把握しておきましょう。

なお、カーローンは基本的に一台の車に対して契約できるのは一人です。夫婦や親子で共同名義のローンを組むといったことは原則できません。ローン契約者は必ず単独で一人となります。ただし保証人を立てることは可能ですので、収入の少ない人がローンを組む際に別の家族が保証人になるケースはあります。

また、金融機関によっては、親子など2親等以内の親族が使用する車であれば、親が借りて子供名義の車を購入することを認めるマイカーローン商品を提供していることもあります。もし家族名義で車のローンを組みたい場合は、こうしたローンが利用できないか金融機関に確認してみると良いでしょう。

名義貸しになってしまうケース(問題が起こる場合)

反対に、名義人とローン契約者の分離が問題になるケースもあります。それは、実際に車を使う人とローン契約者・登録上の使用者が食い違っており、形式的に名義だけを貸しているような場合です。

例えば先ほどの親子の例で、本来は子供が主に車を使っているのに、車検証上の使用者も親のままになっているとします。一見、親がローンを組んで親の車という形になっていますが、実態は「子供のために親の名義を貸してローンを組んでいる」状態です。これは家族間であっても名義貸しとみなされる恐れがあります。

名義貸しとは、実際に契約の主体にならない人が名義だけを提供して契約行為を行うことで、日本では法律で禁止されています。車のローンで名義貸しを行うことは、契約上もトラブルの元になるため絶対に避けるべきです。もし名義だけ貸してローンを組んだ場合、たとえ身内同士でも違法行為(場合によっては詐欺罪に問われる可能性があります)となり得ます。

さらに、名義貸しをしてしまうと重大なリスクがあります。万一、「名義を借りた側」(実際に車を使ってローン支払いをすべき人)が支払いを滞納した場合でも、ローンの返済義務は契約上「名義を貸した側」にあります。つまりローン名義人になっている人が、相手の滞納分も含めて支払い続けなければならなくなります。支払いができなくなれば、信用情報に傷が付いたり、名義人の方に督促や差し押さえが及ぶ可能性もあります。

こうした事態を避けるためにも、実質的な使用者と契約者を一致させて登録すること(つまり最初から正しく所有者・使用者を分けて登録しておくこと)が大切です。無理に他人(家族以外)の名義でローンを組むような行為はやめましょう。

車の名義人とローン契約者を分けることのメリット・デメリット

名義とローン契約者を分けるケースには、いくつかのメリットとデメリットがあります。ここでは、家族間で車の名義人とローン契約者を別にすることを想定して、それぞれのポイントを確認します。

メリット

  • ローン審査に通りにくい人でも車を持てる:収入が不安定だったり勤続年数が短かったりする方(例えば学生、新社会人、フリーター、専業主婦など)は、自分名義ではカーローンの審査に通らない場合があります。しかし、安定した収入のある親や配偶者がローン契約者になれば、その人の信用でローンを組むことができるため、車を入手できる可能性が広がります。
  • 好条件のローンを利用できる:収入や信用状況の良い家族が代わりに契約することで、より低金利のローンや高額の融資枠を利用できる場合があります。結果として、車両の選択肢が増えたり、総支払額を抑えられたりするメリットがあります。
  • 家族内で役割分担ができる:家族の中で「支払いは親が管理し、車の日常管理は子供が行う」など役割を分けられる点もメリットと感じる場合があります。支払いを得意な人に任せ、運転や維持管理を別の人が担当するといった分担が可能です。

デメリット

  • 手続きや管理が複雑になる:所有者と使用者が異なることで、車に関する手続きの際に双方の協力が必要になります。例えば、車を売却したい場合、所有者でなければ売却手続きができません。使用者の判断で勝手に売ることはできず、必ず所有者の同意と手続きが必要です。廃車や名義変更(譲渡)の手続きも、基本的に所有者本人でないと行えません。
  • 税金や維持費の負担者が分かれる:自動車税や自賠責保険料、車検費用など、車の維持にかかる費用の名目上の負担者は所有者になります。しかし実際に車を使っているのは使用者なので、家族間で「誰がどの費用を払うか」を取り決めておかないと混乱する恐れがあります。
  • 後で名義を変更する際に税金がかかる場合がある:ローン完済後などに車の所有者を使用者側に変更したい場合、車両の評価額によっては贈与税が発生する可能性があります。特に、名義変更によって車を譲り受ける形になり、車の時価が110万円を超える場合には贈与税の対象となり得ます。親から子へ車を譲渡する場合でも税金がかかるケースがあるため注意しましょう。
  • 保険契約や等級引継ぎに制限が生じる:車の名義が自分でない場合、任意保険の契約や等級(無事故割引)の引き継ぎに条件が付きます。等級は基本的に記名被保険者(主に運転する人)に紐づくため、契約者や所有者が変わると家族間でも等級を引き継げない場合があります(特に別居の親子間など)。保険の項目については次章で詳しく説明します。

名義人と契約者が違う場合の自動車保険への影響

車の名義(所有者)とローン契約者が異なる場合、自動車保険は問題なく加入できるのでしょうか。ここでは、自賠責保険(強制保険)と任意保険に分けて、名義が絡む保険の扱いについて解説します。

自賠責保険(強制保険)について

自賠責保険は車を登録・公道走行するために必ず加入しなければならない保険です。通常、車の所有者が契約者となって加入します。そのため、基本的には自賠責保険の名義(契約者)は車検証上の所有者と同一になります。

ただし、先述のようにディーラーローンを利用して車の所有者名義が信販会社等になっている場合は、実際に車を購入して使用している人(車検証上の使用者)が自賠責保険の契約者となります。いずれにせよ、車を所有・使用する人は必ず自賠責保険に切らさず加入し続ける必要があります。

任意保険(自動車保険)について

任意保険(自動車保険)は、自賠責ではカバーしきれない損害に備えるための民間の保険です。任意保険の場合、必ずしも車の所有者が保険契約者になる必要はありません。保険会社の条件次第では、車の所有者と異なる人でも契約者・被保険者となって保険に加入できます。ただし、その可否は車の所有者と契約者の関係性によって異なります。

一般的なケースでは、以下のような扱いになります:

車の所有者の名義任意保険加入の可否
自分本人○(問題なく加入できる)
配偶者(夫・妻)○(加入できる)
親・子供など同居の親族○(加入できる)
親・子供など別居の親族△(保険会社によって可否が分かれる)
ディーラー・信販会社○(加入できる)
友人・知人×(契約不可、名義変更が必要)

このように、車の所有者が本人や配偶者、同居の家族であれば、たとえ車の名義人と保険契約者が違っていても保険加入は認められるのが一般的です。しかし、所有者が血縁のない他人(友人など)だったり、親族であっても別居している場合は、原則として自分名義の任意保険では契約できないと考えたほうがよいでしょう。もし友人名義の車を譲り受けた場合には、速やかに名義変更の手続きを行い、自分が所有者となった上で任意保険に加入する必要があります。

また、ディーラーローンで所有者が販売店や信販会社になっている車であっても、使用者本人が任意保険に加入することは可能です。実際に車を使用・管理しているのが契約者本人であれば、所有者がディーラー名義でも保険契約上は問題なく受け付けてもらえます。

任意保険契約では、契約時に「記名被保険者」(その車を主に運転する人)を指定する必要があります。たとえば親が契約者となって保険に加入する場合でも、実際によく運転するのが子供であれば記名被保険者は子供に設定します。記名被保険者の年齢や運転歴によって保険料が計算されますので、実態に合わせて正しく設定しましょう。

さらに、任意保険では運転者の範囲を限定することもできます。「運転者を本人のみ」「本人と配偶者のみ」「家族限定」など契約時に選択できますので、車を使用する人に合わせて設定してください。範囲を狭めるほど保険料は割安になりますが、家族以外の人(友人など)が運転する可能性がある場合は「限定なし」にしておくか、運転させないように注意しましょう。

なお、他人名義の車を一時的に運転する場合、自分が加入している別の車の保険に「他車運転特約」が付帯されていれば、借りた車で事故を起こした際にも自分の保険で補償を受けられる場合があります。ただし補償範囲や条件は各保険会社の約款によるため、あらかじめ確認しておくと安心です。

ローンの返済ができなくなったら車はどうなる?

車の名義人とローン契約者を分けて利用している場合でも、ローンの返済義務がなくなるわけではありません。では、もしローン契約者が支払い困難に陥った場合、車はどうなるのでしょうか。

原則として、ローン残債が残っている間は車の所有者を変更すること(名義変更)はできません。ローンを完済するまでは、車には金融機関の担保権が付いているためです。そのため、ローンの返済が滞った場合には、基本的には車を手放して売却し、その代金でローン残債に充当することになります。ディーラーローンの場合は所有権留保されていますから、返済滞納が続けば最終的に車両は引き揚げ(回収)されてしまうでしょう。

また、ローン契約者(所有者)が死亡してしまった場合は、残ったローン債務は相続人が引き継ぐことになります。相続放棄しない限り、ローンは消滅せずに残りますので注意が必要です。車を実際に使用していた人(例えば子供)は、そのまま車に乗り続けられるかどうかは新たな所有者(相続人)の判断次第です。場合によっては相続人がローンを一括返済して車の所有権を確保し、その上で使用者に譲渡するといった手続きが必要になることもあります。

いずれにせよ、ローン契約者が返済できなくなる事態は車の利用に大きな影響を及ぼします。そうならないためにも、計画的な返済と無理のない借入を心掛けることが大切です。

名義人と契約者を分ける際の手続き上の注意点

最後に、車の名義人(所有者)とローン契約者が異なる場合や、所有者と使用者が異なる場合における各種手続き・義務について確認しておきましょう。名義を分けて車に乗る際には、以下のポイントに注意が必要です。

自動車税・重量税の納税義務

毎年4月1日時点の車の所有者には、自動車税(種別割)を納める義務があります。また、新車購入時や車検の際には自動車重量税も所有者に課税されます。基本的には車検証上の所有者宛てに納税通知書が届き、所有者が納税する建前です。

しかし、ディーラーローン利用中で所有者がディーラー等になっている場合や、家族間で所有者と使用者が異なる場合には、実際に車を使用している人(使用者)が税金を負担するケースがほとんどでしょう。たとえば親名義の車を子供が使っているなら、納税通知書は親に届きますが、実際の納税費用は子供が負担するといった取り決めになります。いずれにしても、誰が費用を負担するか家族内で明確に決めておくことがトラブル防止のためにも重要です。

車庫証明(保管場所証明)の取得

自動車を登録する際には車庫証明(自動車保管場所証明書)が必要です。これは車をどこに保管するかを証明するもので、通常は車を主に使用する人(使用者)の住所地管轄で取得します。手続きとしては、使用者の住所地を管轄する警察署に申請を行います。

車庫証明の申請者欄には原則として使用者の氏名・住所を記載します。所有者と使用者が異なる場合でも、基本的に手続きの流れや必要書類は変わりません。ただし、所有者が遠方にいる場合などは委任状を用意し、使用者が代理で申請を行うことも可能です。販売店が代行してくれることも多いですが、名義を分ける場合は誰が車庫証明を取得するかをあらかじめ確認しておくと良いでしょう。

車検(継続検査)を受ける義務

車検(継続車両検査)を適切な時期に受けることも、車の所有者の責任です。法律上は所有者が車検を実施する義務を負います。しかし実際には、所有者と使用者が異なる場合でも車を管理・使用している側(使用者)が車検の手続きを行うのが一般的です。

特にディーラーローンで所有者が信販会社等になっているケースでは、車を実際に使用しているのは購入者(使用者)ですから、車検の時期になれば使用者が自ら整備工場やディーラーに持ち込んで車検を受けます。費用も使用者が負担します。同様に、家族間で所有者と使用者を分けている場合も、実際に車に乗っている人が責任を持って車検を通すようにしましょう。

なお、所有者が遠方に住んでいるなどで車検手続きに立ち会えない場合、車検証上の使用者が手続きを行うこと自体は問題ありません。ただし車検後に交付される新しい車検証には所有者の署名(押印)が必要な場合がありますので、事前に手続方法を確認し、スムーズに対応できるようにしておくと安心です。

まとめ:基本は名義人とローン契約者を同じにするのが安心

ここまで見てきたように、車の名義人(所有者)とローン契約者が違う人になるケースは、家族間であれば適切な手続きを踏むことで可能です。ただし、名義を分けることで生じる注意点も多く、後から手続きが煩雑になったり、管理責任が分散するデメリットがあります。基本的には車の所有者とローン契約者は同一人物にしておく方がシンプルで安心だと言えるでしょう。

とはいえ、経済的事情や家族の状況によってはやむを得ず名義と契約者を分ける選択をする場合もあるでしょう。その際は、本記事で解説したポイントを踏まえて、トラブルを防ぐための取り決めや手続きを確実に行うことが大切です。所有者・使用者それぞれの役割や責任を家族内で共有し、保険の条件や税金の支払いについてもしっかり確認しておきましょう。

もし「自分ではローンを組めないけど車に乗りたい」「名義のことでトラブルが起きないか心配」といった場合には、カーリースという選択肢も検討してみてください。カーリースであれば、車の所有者はリース会社となり、ユーザーは車を借りて利用する形になります。月々の定額料金を支払うだけで車に乗れ、所有者としての税金納付や車検手続きといった煩わしい管理はリース会社が代行してくれるため、名義やローンの心配をせずにカーライフを楽しめます。

車の名義やローン契約について正しい知識を持ち、適切な方法で手続きを行えば、後々のトラブルを防ぎ安心してカーライフを送ることができます。ぜひ本記事の内容を参考に、納得のいく形で車を手に入れてください。

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轟マガジン編集部
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